第1章 まだ始まらない

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第1章 まだ始まらない

青い海、青い空。海風に吹かれながら舞う海鳥達。誰も居ない海岸にひとつの影ー…。 その影は海に向かって歩いているようだ。 「よし!誰もいないな…?」 キョロキョロと辺りを見渡して確認しているその人影は、先程、何かから逃げ隠れしていた少年だった。少年はさらに海に近づき、 「じゃ、そろそろ参りましょうかね」 そう言って両手を前にかざして呪文を唱え始めた…その時…… 「何処に行く気ィ…?」 突然、少年の背後から女の子の殺意を押し殺したような声が聞こえてきたのだ。 ゾクッと少年の背筋は凍り付いた。この声の主を、彼は知っている。 「ル、ルチーナ…」 恐る恐る振り返り、少女の名を口にした。 そこには身長が少年よりやや高めの少女が立っていた。淡い桃色が可愛い長い髪を、上の方だけふたつに分けて星形に結わえ、残った下の髪を前に流している。動きやすく可愛い彼女の服装はチェック柄の服とスカートがメインのコーディネートだ。瞳の色は暖色メインの彼女のイメージとは裏腹に深いマリンブルーだ。きっと普段は可愛らしい女の子なのだろうが、今、この時だけは般若のような鬼の形相をしていた。 「な…なんでここに…」     
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