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「で、でもどうして?あれが折れるような前触れなんて無かったじゃない。嵐だって起きてない。空だって晴れてるのに、こんな…海だけが荒れるなんて…」
風が強く吹いているわけではない。大嵐が来ているわけでもない。空は晴れている。誰かの魔法とでも言うのだろうか?ただひとつ、わかるのは、これが自然災害で起こりえることではないだろうという事だけだった。
アラヌスは頭を掻きながら荒れた海を見る。
「……なぁ、原因究明といかないか?」
「…はぁ。……そう言うと思ったわよ」
「よし!そうこなくっちゃな!」
アラヌスは嬉しそうに両手を前に出し、手を重ねる。ルチーナも片手を出し、前に出した腕を掴むようにもう片方の手を乗せる。
「じゃあ、準備はいいか?」
「ええ。良いわよ!」
「んじゃあ、行くぞ!」
ーー我、迷える光、前に導くは希望と願い。我らの願いに応え、辿り着かんとする意志に扉を開け!
ーー
二人が詠唱し終えると、二人の目の前に光輝く扉が現れた。
その扉はゆっくりと開き、二人を飲み込み、その扉を閉め、姿を消した。
二人がいた海岸には誰も居なくなり、狂気の海と化したその海だけをそこに残した。
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