2人が本棚に入れています
本棚に追加
ありったけの笑顔をみせていると、美咲が帰ってきた。
わたしの顔色をみて、別の話に切り替えてくれた。
美咲がいなければ、このバランスが崩れてしまう。だからついつい美咲に甘えてしまうわたしが悪い。
未来と美咲と別れ、家に帰る。夫はまだ仕事から戻らない。
つけっぱなしのパソコンの前に座り、SNSのサイトを開いて、指からつぶやきを発信する。
「今日、友達に会って、疲れた」
嘆きを聞きつけて他の人が『それわかる』と反応する。
気づけば日常会える友人よりもネットをつなげればいつでも出会える友人のほうが多くなっていた。顔も性質もわからないけれど、文章から生まれる安心感だけを頼りにして今日も自分と相手をしてくれたことに満足を得る。
「女って怖いよね」
もう何十年も女をやっているけれど、他人はおろか、自分の女性に対する考え方がよくわからない。
「嫉妬されたくないよね」
口先だけで、本当は自分よりも下に見られないように努力している。自分が上に立った瞬間の優越感に浸りたいがゆえの誘導尋問が繰り広げられる。たとえ友達でも容赦ない。女社会から出たいのに、どうして出られないものなんだろう。それは麻薬のように、細く長い優しさがあるから、抜けられない。
最初のコメントを投稿しよう!