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「未来、どうだった? あの動画」
美咲が気を使ったのか、間をあけるのが怖いのか、話をふってきた。
「古臭いよね」
わたしが答える前に凛子はぽつりとつぶやいた。
「古臭い? 今、こういうの流行ってるんじゃないの?」
昔から凛子はそうだ。他人を掘り下げる癖がある。
「それよりさ、旅行行こうよ」
と、凛子はスマホを操作して画面をわたしと美咲にみせる。ピンク色のネイルが光る。彼女は昨年結婚して主婦になったのだが、昔とは変わらずにおしゃれに気を配っていた。
スマホの画面上にはトラベルサイトが載っていて、そのなかでも5つ星を獲得した旅館やホテルの名前がずらりと並べられていた。
「また今度、話そう」
と、美咲が苦笑いしている。そうやってまた二人で旅行にいくんだろう。わたしを置いて。
「あれ、美咲、また太った?」
凛子が悪びれずに話す。こういった話も昔から一緒だ。美咲も前よりもわたしのほうが二の腕が太いし、お腹もでているんだけどと思いながら気を使っていわないのか、気にしてくれていないからいわないのか、どちらなんだろう。
「生理前だから仕方ないじゃん」
美咲はゲラゲラ笑って、追加注文した生クリームたっぷりのプリンを空にした。
「このお腹は夢と希望がつまってるんだから。嫌いじゃないんでしょ、私のこと」
「もちろん」
二人の冗談を聞きながら、アイスコーヒーをすする。
高校時代にこの二人で飲んだコーヒーの味も今も苦いな、と感じた。
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