凛子(りんこ)の事情

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 美咲が未来も一緒にどう? と連絡があったので参加した。未来とは同窓会以来だ。別の中学から高校に入学し、美咲と未来とわたしは同じクラス。そのときからクラスで浮いた存在の和美もたまにではあるが、わたしたちのグループに入ったり出たりの繰り返しをしていたが、やがて和美自身、一人で行動するようになってから彼女とは疎遠になった。美咲は和美とは中学時代から親しかったらしいが、高校を卒業からは年賀状だけの付き合いになっていた。美咲がトイレにいっている間、未来と話をした。 「そういえば、まだ小説、書いてるの?」 「うん。まあね」  未来はわたしのことなんて何も考えてはくれてない。学生時代からずっとそうだ。早く美咲、帰ってこないかな。 「今も夢、追いかけてるの?」 「夢か。もう夢見る頃なんてすぎてるのにね」  おもいっきり追いかけてるのに、未来には言い出せなかった。 「凛子は現実的だね。これからの社会なんて夢みても仕方ないよ」  学生時代はあれほど、夢のない人間は死んだのも一緒だなんてアツく語っていたひとだったのに。いつも周りにひとがいてまぶしい存在だったひとが、社会人になり、気がつけば上からも下からも毎日揉まれる日々を送り、終わらせないように仕向ける上司の洗脳にまんまとひっかかりながら残業を繰り返してしまう真面目人間に変化するだなんて。
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