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月を掴む
「ねえ・・・・・・あの約束、まだ覚えているの?」
「――――忘れるわけが無いでしょ。あの約束があったから今、私たちはこうして同居生活をしてる。あれから・・・・・・もう15年も経つんだっけ」
ベランダで私たちは月を眺めながら晩酌を酌み交わしていた彼女が突然投げかけた問いに私は答えた。
幼さからくる無知と、純粋さによって形作られた約束。15年となると、それらを風化させるには容易い年月だ。けれど、私にとってその約束はいかなる物質よりも強固で、私を支えている。あの約束があるから、今の私がある。
「変わらないんだね・・・・・・そうやって、月に手を伸ばすところなんかも」
「届かないとは分かっていても、いつか、掴めたらいいなって・・・・・・夢、なのかな。二十歳にもなってなんだか子供っぽい気もするけれど」
幼年期に交わした約束を果たしたいと思っている時点で子供なのかもしれないけれど、もし、その約束を諦めたり、忘れることが、大人になる条件ならば――――私は、子供のままでいい。
――――おおきくなったらかなちゃんとけっこんする。
――――うん。けっこんしよ、りさちゃん。
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