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私は高校三年生の時に彼女たちと同じ事務所のオーディションを受けた。結果は書類審査の時点で不合格。面接に進むことすらできない現実を突きつけられた私は、やけになって片っ端からあらゆる事務所に履歴書を送った。そのうちのいくつかは面接までこぎつけることができたものの、最終面接を突破することはできなかった。もうこれで駄目だったらすっぱりと諦めよう、そう思った矢先、唯一合格の連絡をくれたのが今の事務所だった。捨てる神あれば拾う神ありとはこのことかと思った私は、親の反対を押し切って地元を飛び出し、大学進学で東京に出てきたキョーコの家に転がり込んだのだ。
司会者は、かのんちゃんのざっくりとしたプロフィールを読み上げた。その間、画面にはドリガのミュージックビデオや、かのんちゃんが出演したドラマの映像が流れていた。
「最近はドラマ出演もされて、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いですよね!」
かのんちゃんは「いやいやそんなことないですよ」と言いながら小さく首を振った。
「どうですか?これをきっかけに、お芝居の仕事に力を入れていきたいとかって思ったりします?」
司会者の言葉に、にこにこしていたかのんちゃんの顔が一転して、真剣な顔つきになった。
「お芝居の仕事もとってもやりがいがあるな、もっと自分とは全然違うような役を演じてみたいなって思いました。そういった機会が頂けたら、是非やってみたいと思います」
でも、と、かのんちゃんは言葉を続けた。
「どんなお仕事をやっても、私の帰る場所はドリガなんです。私がアイドルさんたちからいっぱいキラキラを貰ったように、私も沢山の人にキラキラを届けたい。アイドルの仕事が一番っていうのは私の中で絶対に揺るがないですね」
そう強く言い切ったかのんちゃんの表情は凛としていて、とても綺麗だった。私は彼女のこういうところに心底惚れたのだ。
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