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「宮原、一緒に帰ろう!」
自分のドキドキを隠すように出来るだけ軽い感じで声をかけた。
「鳴瀬、ごめん…クラス委員の集まりがあって。」
座ったまま上目遣いで見上げてくる宮原の顔がすごくかっこよくて、どうにかなりそうだった。
「だ、大丈夫!待ってるから。」
「でも、どれぐらいかかるかわからないよ。」
「だ、だって、ほら…テスト見せる約束してるし!」
慌てる私を見てる彼と私のあいだに、変な間があく。
「あははっ!」
珍しく宮原が声を上げて笑った。
そして、ゆっくりと伸ばされた手が私の頬に触れて彼の親指が輪郭を探すように動く。
「…鳴瀬は、本当に可愛いね。」
「えっ!ぁ……あっ、み、みや、みや…はら…。」
「出来るだけ、早く終わらせて来るから待ってて。」
「ぅん……、宮原の席、座っててもいい?」
「いいよ。」
そう言いながら、席をたち私に譲ってくれた。
「あっ、そうだ…。」
扉近くで止まった彼が、振り返る。
「口開けて。」
「?」
言われるがまま口を開けると彼の長い指で、口の中にいつものチョコレートを放り込まれた。
「!!」
びっくりし過ぎて声が出ない私に手を振ってから彼は教室を出て行った。
「はぁぁ~~…。」
心臓がどんどん煩く鳴り始める。
口の中でゆっくりと溶けていくチョコレートは、いつも以上に甘い。
彼の席に座りながら、彼が見ている世界を知る。
私には、近すぎる黒板と教卓。
本を読むには、人の出入りが気になる入口のそば。
彼の温もりなんて残ってない机に頭を預ける。
「…早く戻ってこないかなぁ…。」
ついそんなことを呟きながら、意識を手放していた。
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