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「宮原が恥ずかしい事言うから…キャッ!!」
彼に文句を言った瞬間に電車が大きく揺れて私の事を守るように立っていた宮原の態勢が崩れた。
「鳴瀬、大丈夫!」
頭の上から聞こえる彼の声。
潰されるのを防ぐために抱きしめられ、すっぽりと彼の胸の中に収まっていた。
彼の声と、すごく早い心臓の『トクントクン』って音が私の体を包む。
「だい…じょ……ぶ。」
見なくたって、自分の顔が真っ赤なのがわかる。
宮原から離れようとした瞬間、私を抱きしめる彼の腕に力が入る。
「ごめん、もう少し…このままでいさせて…。」
囁くような彼の声に胸の中がギュッとときめく。恥ずかしくて宮原の胸の中で小さく頷くのが精一杯だった。
「…ありがとう。」
二人して顔を見れないまま。
たった二駅。
たった6分。
それでも、とても長い6分。
「……っかい……。」
電車の音にかき消されるような彼の声が聞こえた。
「何?」
「…なんでもない…。」
「気になるだけど!」
「…本当になんでもないよ。ほら、着くよ。」
背中側の扉がゆっくりと開いた。
宮原に支えられながら、駅に降りる。周りにも同じ制服をきた子たちが降りて来る。
さっきまで近かった彼の体が離れた事に少しだけ寂しく感じながらも肩を並べて登校できることが嬉しかった。
「今日、テスト返却日だけど大丈夫なの?」
「あっ、そうだった…忘れてたし。」
「いや、忘れてちゃまずいでしょ。」
「そうなんだけど。…まぁ、今回は宮原先生が居たから大丈夫だけだねー。」
少しイタズラっぽく言ってみる。
「じゃぁ、昼休みに確認するからちゃんと見せてね。」
「えっ!!」
「何を間違えたか確認しないと次の対策たてらんないから。先生の言うことは絶対。」
「…了解しました。」
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