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はじめてのランニングから帰宅した夜、夢を見た。
亡くしてしまった、産まれてくるはずだった私の子供を抱いている夢。
その子は私にもおそらく父親であろう人物にも似ていなくて、ただ私の初恋だった同級生に少しだけ似ているような気がした。
ああ、次、目が覚めたら。
今までのことが、全部すっかり夢だったことにならないだろうか。
今日も目が覚める。
私のお腹の中には、昨日と同じくなにもない。
なにもかも、なかったことにはなっていない。
そう、なかったことにはなっていないのだ。
昨日、あの用務員の男性と話をしたことも、倒れた拍子に靴ひもが切れてしまったことも。
ぜんぶ。
ぜんぶが消えずに繋がっているのなら、いつか、私が殺してしまったあの子へと繋がることもあるかもしれない。
誰かさんが捨てたあの男性の人生が、私の人生に繋がったように。
それなら、続けてみるのもいいのかもしれない。
こんな、くそったれの人生も。
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