出口のないゆりかご

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***    はじめてのランニングから帰宅した夜、夢を見た。  亡くしてしまった、産まれてくるはずだった私の子供を抱いている夢。  その子は私にもおそらく父親であろう人物にも似ていなくて、ただ私の初恋だった同級生に少しだけ似ているような気がした。  ああ、次、目が覚めたら。  今までのことが、全部すっかり夢だったことにならないだろうか。  今日も目が覚める。  私のお腹の中には、昨日と同じくなにもない。  なにもかも、なかったことにはなっていない。  そう、なかったことにはなっていないのだ。  昨日、あの用務員の男性と話をしたことも、倒れた拍子に靴ひもが切れてしまったことも。  ぜんぶ。  ぜんぶが消えずに繋がっているのなら、いつか、私が殺してしまったあの子へと繋がることもあるかもしれない。  誰かさんが捨てたあの男性の人生が、私の人生に繋がったように。  それなら、続けてみるのもいいのかもしれない。  こんな、くそったれの人生も。
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