目覚めればソドム

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目覚めればソドム

朝目覚めるとそこは真っ白な世界だった。粘着テープのようにねばついた瞼を苦心さんたんして開けると、視界が光であふれた。 あまりの眩しさに目をあけていられない。ぎゅっと顔をしかめると涙がこぼれ落ちた。横たわった身体をくの字に曲げて咳き込む。 すると、耳元で誰かがささやいた。 「すまんのう。今、光を作っておる」 しわがれた男の声がすぐそばから聞こえる。だが俺はそれどころじゃない。ツンとした刺激が鼻の粘膜を突き抜ける。大量のワサビを詰め込まれたようだ。 「オゾン臭じゃ。急いで大気をこしらえた。お前さんが死んでしまうからのう」 老人が丁寧に説明してくれる。そんなことはどうでもいい。俺はのたうち回りながら心の中で叫んだ。 「もう少しの辛抱じゃ。じきに最小構成モードが立ち上がる」 何なんだ、その立ち上がるって。まるでパソコンでも起動するような言い草じゃないか。さっきから聞いている内容を総合すると、正体不明の声は俺の生存環境を一生懸命に準備しているらしい。     
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