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昔、野沢はその頃、誰もが目指したように自ら立ち上げた会社を大きくすることに腐心した。野沢には他の人と違う、ちょっとしたアイデアがあった。そのアイデアを実現することに精力を注ぎ、さらにそれを浸透させることに全力を尽くした。
そして気が付いた時には、野沢の会社は押しも押されぬIT業界の大企業となっていた。
その野沢が、地位も名誉も富も捨てた。
野沢は何の見返りも求めずに自ら立ち上げた会社を去った。莫大な財産のほとんどを慈善団体に寄付し、細々と生活していけるだけのものを手元に残しただけだった。
野沢はなぜ自分がそのような気持ちになったのか、自分でもわからなかった。もともとお金には興味がなかった。興味がなかったから、利益を追求しなかったし、投機的なことにも関心がなかった。それでうまくいったのかどうかはわからない。ただ、自分がやりたいように、なりたいようになるために一心不乱に働いてきただけだった。
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