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 その時、野沢の小さなオフィスを訪ねてきた者があった。  オフィスにはまだ野沢一人しかいない。そこにオフィスを構えたことを知っている者もほとんどいないはずだった。  野沢を訪ねてきたのは、今や日本有数の大企業の社長となった河村と片岡だった。 「おや、お二人おそろいでというのは珍しい。よくここがわかったね」  野沢は快く二人を迎え入れた。 「お久しぶりです」  二人は真面目腐った顔で、小さなオフィスに入ってきた。 「まだ一人だし、何の用意もしてないので、お茶も出してやれなくて。申し訳ないね」 「いえ構いません」  野沢の片腕だった片岡が、オフィスの中を見まわしながら言った。 「今度は何をするつもりなのですか?」  野沢の勧めた粗末な椅子に座りながら河村が尋ねた。 「今のところはまだ何も決めてないんだけど、もう一度同じ業界に挑戦してみるつもりだよ」 「そうですか。実は私達、もう一度あなたの力をお借りしたいと思って来ました」  片岡が言った。
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