幸せの日々追い求め迷い込み…

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幸せの日々追い求め迷い込み…

目を開けると、最初に見えたのは博士の顔だった。 「おはよう。ラスエルロス。七番目のマリーン」 僕の記憶はそこから始まっている。 培養液の中から出ることは許されなかった。出た途端に細胞が溶け出してしまうらしかった。 ケースの中から見える外の景色は変わらないようで毎日が違っていた。 時々訪れる、自分のモデルとなったマリーンという少女と博士の仲睦まじい姿が好きだった。 なんだか自分もその中に入っているように思えた。幸せだった。 不思議なことに、僕はケースの中から、外の世界を知ることが出来た。 ここが研究所であること。その外にはもっと大きな世界があること。街があって人がたくさんいて・・・。 そのせいかどうか、僕にはマリーンの記憶移植がうまくいかなかった。 マリーンの記憶はマリーンの記憶として、情報として僕の中には入ってきたが、人格として根付くことはなかった。 僕はクローンなのに、一人の独立した人格を形成してしまったのだ。 通常のクローンは、モデルの人格がなければ、ただの肉の塊、赤ん坊以下の知能しか持たない。なのに僕には意思が、一人の独立した人格を、目を開けたその時にもう形成されてしまっていたのだ。 皆が僕に注目した。僕だけ検査が多かった。 マリーンの記憶を移植された他のクローン達が次々と出て行くのを、僕はケースの中から見ていた。 僕より前に出来たマリーン、僕より後にできた八番目のマリーン。 ケースにずっといることに不満を感じないわけではなかったが、そうしなければ生きていけないことも分かっていたから別に気にしなかった。ちょっとうらやましくはあったけど、僕にはこの能力があったから。
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