10人が本棚に入れています
本棚に追加
最初は弟子入りを断られた下駄職人への道。
しかし、俺は何度もその下駄屋に通い続けた。
一度、惚れこんでしまった『職人の技』。
俺が、自分でやりたいと思うことを、自分の力で得ようとするなど、これまでの人生ではなかった。
父の敷いたレール。
母のお膳立て。
その上を歩いてきたこれまでの人生。
そんな人生から脱却するには、このチャンスしかないと、若い俺は思った。
そして、2か月通ったある日。
「職人は忍耐と集中力。諦めの悪さもまた、忍耐の賜物よ。……明日から工房に来い。本当は、職人は喉から手が出るほど欲しかったんだ。」
老人が、ついに俺の弟子入りを認めてくれた。
そしてその夜。
俺は数か月ぶりに母に連絡をした。
母は、俺が職人の弟子入りをしたことに大層驚いたが、それでも、
「自分の掴んだ仕事なんだから、しっかりやりなさい。」
そう、背中を押してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!