10人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
高校は、何とか3年で卒業できた。
出席はしていた。
早退が多く、教師の間で審査にもかけられたらしいが、成績が下がったとはいえ『人並み』の成績であった俺は、小論文を提出することで卒業できることとなった。
卒業式。
父は来なかった。
母は近日みないほどしっかりと化粧をし、和服まで来て俺の卒業式の姿を見に来た。
「卒業、おめでとう!」
無造作に俺が放り投げた卒業証書の入った筒を、大事そうに抱きしめて、そう言った母の満面の笑顔は、今でも忘れることはない。
しかし、父はやはり父だった。
母が広げた卒業証書には見向きもせず、卒業までに審査にかけられた俺の事を、
「この、恥さらしが」
と、罵った。
この瞬間、母が奮発して作った御馳走の味が、全て無くなったのを覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!