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高校卒業してすぐに、俺は家を出た。
上京し、先輩の住むアパートに転がり込んだ。
家を出ることを両親に打ち明けたとき、母は涙を流しながら猛反対した。
俺が今まで見たことも無い、母の姿だった。
父は、新聞から視線を外さないまま、
「……お前の人生だ、好きにしろ。」
そう一言だけ、呟いた。
あんなに、俺の進路についてとやかく言っていた父が。
あんなに、俺の成績を気にしていた父が。
この時、俺はこう思った。
『あぁ、父はもう、俺のことなど見限ったのだ』と。
そう思ったら、行動までにそう時間はかからなかった。
一晩かけて母を説得し、『上京してやりたいことがある』などと嘘をついて。
「やりたいことがあるなら、納得のいくように頑張ってきなさい。」
最後は俺のそんな嘘を一生懸命母に応援されたまま……。
……俺は、家を出た。
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