ぼくのなかの さかな

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「ここはずっと雨が降っているんだね」 ぼくの体にすんでいる魚が言った。そのひょうしに、魚の口から出た泡が、ぷわんとただよって、はじけた。 「そうだね、ここは雨ばかりだ。晴れる日も、たまにはあるけど」 「晴れってなぁに?」 「この空が一面の青に染まって、眩しくてあたたかいものがひとつ、空にのぼるんだ」 「ふぅん、それって、嬉しいこと?」 「もちろん。それでね、雨が上がったばかりの時には、虹がかかるんだよ」 「虹ってなぁに?」 「空にね、橋がかかるんだよ。そこをくぐれば、どこか素敵な場所に行けそうな...」 「君はそれを見たことがある?」 「1度だけ。端っこを見た事があるよ」 いいなぁ。魚はそう言って、ぼくのなかをすいすいと泳いだ。
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