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「なーなー俺のこと好き?」
放課後。教室を出て靴箱に向かう途中で、自分よりも頭一個分ほど大きい彼に唐突に問いかけた。
その彼は付き合って1ヶ月の、今風で言う彼ぴっぴくんだ。
「...はい?なに言うてるんお前」
少し前を歩く彼の顔は見えないが、声色からして不機嫌そうだった。
そんな様子にも臆することなく、もう一度問いかける。
「だーかーらー!俺のこと好き?って聞いてるんだけど!」
「好きってどーいう?好きやなきゃ友達やないやろ?」
「そーゆう好きじゃなくて!」
「あー、はいはい好きやで」
理解した彼は頭を掻きながら、自分の欲しい言葉を口にした。好き、と言って欲しかったはずだったが、めんどくさそうに言う彼にぷぅー、と自然と頬が膨らむ。
「なにそれ、全然気持ちがこもってない」
なおも食い下がらない自分に対して彼は、軽くため息をついた。
「お前、ほんまうるさいな~」
「なんで!俺だってふっつーの人たちみたいにイチャラブしたいやん!」
切実さを含んだその声に思わず彼が振り返った。真剣な眼差しで彼を見つめる。彼も同じように視線を返してくれた。10秒間くらいお互いに見つめ合い、彼が先に折れた。心なしか彼の顔が赤いような気がしたが、夕陽と相まっていて赤くなっているのかはわからなかった。
「ーー好きやで」
「俺も好き!」
「はいはい知っとる知っとる」
「もー!なんよそれー!」
そんな放課後の日常。
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