__阻止とお茶会

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失言だらけだったあの日から一ヶ月程が経った。 この一ヶ月の間、暇さえあればリリアーナの元へ行き、すれ違いに肩をぶつけたり、地味に足を出して転ばせてみたり、レパートリーがなかなか増えない罵倒を浴びせたりと色々頑張ってみた。 そのおかげか、少しずつ悪役も様になってきたような気がする。 …気がするだけだ。 まあ、今日までは特に変わった事もなく平和だったはずだ。 「えっと、話って何かな?フェニーちゃん」 私は今、校舎内の空き教室にリリアーナを呼び出して来たところだ。 何も喋らずにじっと見ている私に、戸惑ったように首を傾げるリリアーナ。 どうしよう、話す内容何も考えてなかった。 ポンコツである。 普段であれば適当な罵倒を繰り出して速攻で退散するだけで終わるのだが、今日は彼女を長く引き止める必要がある。 その理由は前回のこの日の出来事が、リリアーナを狂わせる一つの可能性で間違いないからだ。 リリアーナは今日、学校の敷地内から出て街へ行き、最近問題となっている強姦魔に襲われる運命にある。 この事件は運良く未遂で終わるなんて事はなく、前回のリリアーナはボロボロの状態で見つかった。 そして、そのショックから記憶も一部消えてしまっていたのだ。 だから、どうしても今日だけは長時間引き止める必要がある。 「フェニーちゃん…?」 何を言えばいいのか必死に頭を働かせている私に、リリアーナが不思議そうに声を掛けてくる。 君のために今考えてるから、少し待ってもらっていいですか。 本当に何も浮かばなくて困ってるんだ、頭真っ白なんだ。 自分のポンコツ具合が思ったより深刻な状態である事に乾いた笑みが漏れる。 「…うるさいなぁ。急かさないでくれる?これから予定でもあるわけ?」 「え?う、うん。一応…」 一先ず予定を確認してみたが、やはり何かしら予定があるようだ。 やっぱり街に行く気なのだろうか。
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