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我ながら嘘をつくのが相当下手くそなんだと思う。
咄嗟に嫌いと言った後のセドリック王子の静かな笑いは怖かった。
あれ以来会う度にビクビクしちゃうんだけど、これなんて病気?
病院行こうかな…いや、今街に行ったら強姦魔に狙われる可能性がある。
やめとこ。
なんて現実逃避を始めていると、空き教室の扉から顔を出していたセドリック王子が私とリリアーナに近付いてきた。
「あああもうやめてください、近付かないでくださいやだやだやだやだ嫌いいい」
「…嫌だなあ、私は何も怖い事なんてしていないつもりなんだけどね」
「二人は、何かあったの?」
反射的に出てしまう拒否反応を抑えきれない私と、そんな私に笑みを深めながらはて、と首を傾げるセドリック王子。
そのやり取りを見てリリアーナは目を瞬かせた。
そういえば、嫌いと言った時にリリアーナは居なかったっけ。
…セドリック王子のせいで私の悪役計画が台無しになりつつある。
いっそ殺してしまおうか、こいつ。
「いいや?特に何もなかったはずだよ。──ね、子猫ちゃん?」
「ひぃ…!私に話し掛けないでください!もう帰ります!」
「おっと、そんなに怯えられると傷つくなあ」
「も、もううううう!離してください!」
セドリック王子の意味深な問い掛けに恐怖を覚えて横を通り抜けようとすると、あっさりと腕を掴まれてしまった。
何この人!
やだやだやだやだやだ!
ぶんぶんと腕を振り回してセドリック王子の手を振り払おうとするのに、その手が離れる事はない。
力強く掴まれてるわけでもないのに、何故だ。何故取れない!?
「せ、セドリック?フェニーちゃんが困ってるから、あの、離してあげたら…?」
見兼ねたリリアーナが助け舟を出してくれる。
罵倒しまくりの私にも優しいとかなんだよ、天使かあなたは。
「うーん、でもお茶会に連れて行くつもりだから、逃げられると困るんだよね」
「え"」
今この人なんつった?
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