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「やあ、リリアーナ。…と、フェニーさん?」
抵抗虚しく連れて来られた庭先には、真っ白な丸テーブルの周りに椅子を並べ、それぞれの位置に優雅に座っている王子達が居た。
やって来た私達に気づいたディーク王子が片手をひらりと上げたものの、私を見ると不思議そうに首を傾げた。
アッお呼びじゃないですよね!
すぐ帰りますね!
「探しに行ったら子猫ちゃんが居てね。一緒にお茶をどうかと誘ったんだ」
「ああ、そうだったんだね。フェニーさん、良かったら君も参加して行ってほしい。おいで」
ここまで来ればそうそう逃げられまいと判断されたのか、腕は解放された。
しかし私を逃す気はないらしい。
セドリック王子の誘いに乗った覚えはないんですがね。
何だこれ不運すぎないか。
リリアーナのために動いたのに、私は何かに呪われているのだろうか。
「…い、いえ」
「つーか、そいつ誰?」
ディーク王子の爽やかな呼び掛けに丁重にお断りさせてもらおうとしていると、私の言葉を遮って五家の王子の一人、オルティス家の第二王子、ライオネル・レスリー・オルティスが口を開いた。
クリーム色のふわふわとした髪と、猫のように気まぐれを匂わす黒目。
加えて男性にしては小柄な体型である事から、女子生徒には弟のように可愛らしいと人気がある。
ただ、ツンデレだ。
懐くまでツンツンとした態度が多い。
「ああ、彼女は僕のクラスメイト。フェニー・カスエルさんだよ。真面目で良い子だから、仲良くしてあげてね」
「…ふーん」
見定めるように上から下までじっと視線を送ってくるライオネル王子に冷や汗が流れる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
リリアーナの事いじめてます、良い子ちゃんじゃないです。
「ま、いいや。早く座れば?」
何かの基準をクリアしたのか、見るのをやめてくい、と顎で空いている椅子を指された。
「い、いや、あの…──っ」
逃げ道を探すべく視線を逸らすと、その先にセドリック王子の笑顔があった。
絶望した。
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