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「おはようシズル。よく眠れた?」
「……おかげさまで、ついさっきまでぐっすりと」
「身体は、痛いところとかないか」
「もう平気」
「……そっか。それは良かった」
と、僕の両肩をがっちりホールドしたままで、おでこに口づけをひとつ。
「俺も、よく寝てた。こんなに気持ちいい朝は初めてだ。……あんなに気持ちいい夜も」
「……それは、良かった……」
僕が呟くと、タツキは声をあげて笑った。僕の体をギュウと抱き、髪をぐしゃぐしゃかき混ぜて、ちゅっちゅっと音を立ててキスの雨。
ばんばん枕を叩きながら、「あぁああーーっ」と謎の絶叫、また僕を抱きしめて大笑い。
人間、これ以上ゴキゲンになれるものなのかってくらい、嬉しそうにはしゃいでいる。
僕は嘆息した。
「うるさいなあ、もう」
「シズル。シズル!」
「だからうるさいって。声が大きいよ、なに?」
「好きだ!!」
タツキは叫んだ。
うわ。すごいなこいつ。よくもそんなにまっすぐに、想いを叫ぶことができるもんだ。
思わず顔をそむけた僕を、覗き込むようにして囁いてくる。
「好きだ。シズル可愛い。好きだ」
「やめろって、もう……」
「どうして? 言わせてよ、やっと許されたんだ。何年我慢したと思ってる? ずっと好きだった。こんなにもずっと好きだったのに、伝えることすらできずにいた。やっと言えた……」
……ああ、もう。わかってる、わかってるってば。
僕は嘆息した。
「わかったから。それよりもう起きろ。これから学校だろ。僕たちの、最後の」
「シズル……」
タツキの眉が、ハの字になった。男前づらがクシャリとつぶれる。
――おや? と思った瞬間、黒い瞳が水浸しになった。
泣きだしたのだ。
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