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「シズルっ?」  目をシロクロさせるタツキに、かぶさるようにして深いキス。  唇に噛みつき、歯の隙間に舌をねじ込んでこじ開ける。思いっきり啜ってやった。  体を起こし、どうだ、とばかりに見下ろすと、タツキは呆然としていた。目の焦点が合ってない。  僕は怒鳴った。 「なめんな! 黙って聞いてれば勝手な思い込みでダラダラと。この静流達明、がきんちょにいいようにされるかよ!」 「えっ、あ……え……」 「小娘じゃないんだぞ。約束うんぬんで自宅に入れやしないし、黙って押し倒されもしないよ。嫌ならきっぱり断るし、本気で抵抗すれば逃げるくらいできる。ついでにいえば言えば飢えてもない!」 「え? い、いや……でも。だって実際……」 「同意も好意もなしに、男同士でこんなことしないって言ってんだ。わかれ馬鹿!」  まだ目を白黒させているタツキ。僕はフンと鼻を鳴らし、ベッドから出ていった。  眼鏡はナイトテーブルで発見。寝間着と下着はもういい、新しいのを穿いていくし。 「あーもう、こんな痴話げんかしてる場合じゃない、もう七時だぞ遅刻する。くそっ、シャワー浴びてる時間ないなもう」 「え……でも学校……卒業式は、九時からじゃ、ないですか?」 「僕たちは準備とかいろいろあるの。始業ギリギリにこればいいってわけにいかないの。お前もこれから社会に出るんだから、そこんとこよく覚えときなさいね」  はい、とタツキは頷いた。よしよし。こいつは昔から、言うことだけはちゃんと聞く、真面目な生徒だったんだ。  僕はクローゼットを開き、事前に用意をしておいた、とびきり仕立てのいい仕事着(スーツ)を羽織った。ネクタイを結びながら、まだベッドにいるタツキを振り返る。 「――じゃあ、僕はもう行くけども、お前はシャワー浴びていけ。朝食は菓子パンでよければ冷蔵庫、ご飯が食べたければとなりのコンビニ」 「はい? はい。え、あの――カギはーっ?」  脱衣所にいる僕に向け、タツキが大きな声を出す。僕は寝ぐせを直しながら、 「下駄箱のとこー! ちゃんとかけてこいよーっ」 「かけたあとは、どうすればいいんですか、先生ーっ!」  僕はふと、手を止めた。  脱衣所から顔を出し、ベエと舌を見せる。
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