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#3
たった三人だけだったが行きつけのリハスタに入る。五時半に予約してたが前の客がすぐに出て行かずに、結局四十五分から曲を合わせ始めた。ドラムが苛立ってテンポが走っているのを感じながらも注意はできなかった。
一通り終わって六時半前に喫煙所に向かう。少し分厚いビニールで区切られたそこは、動物の展覧会みたいで嫌いだった。先客が二人いてとても居心地が悪かったがスタジオの中よりはマシだった。ロングピースを吸いながら色々考えていたが喉が渇いてやめた。半分以上残っているタバコを消してスタジオに戻ると、うちのドラムが僕に向かって嫌悪感を示している。ベースに聞くと、どうもアンプから聞こえてくる歪みのノイズが癪に触ったらしい。ただ、僕が戻ってきても鳴っているそのノイズが心地よかった。ボリュームを下げればすぐに鳴り止むノイズを、敢えて鳴らしっぱなしにしてわざとらしく俺に嫌悪感を剥き出しにするアイツに勝った気分だったからだ。そんな優越感を抱いたまま何食わぬ顔でボリュームを下げた。
その日の演奏はいつもより上手くいった気がした。
家に帰ると部屋から心地いい音が聞こえてくる。安いアンプ内蔵のオーバードライブが安いギターを痛めつけてノイズが鳴っている。いつも部屋でこのノイズが鳴っていたことに今気付いた。自分の鈍感さに腹が立ったが、ノイズの音が鎮めてくれた。
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