#7

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#7

ずる賢い人を見ていると時々癇に障る。所謂同族嫌悪ってやつだ。ただ、ずる賢くなりたいと思っている人は大好きだ。一挙手一投足を使って癒してくれる。例えば何かの心理ゲームをしている時や、嘘をつこうとしている時は分かりやすい。その目線の動きや口の紡ぎ方、姿勢の傾きやどうしようもない空いた手のやり場。ハムストリングスに力が入って、太腿が心臓のように脈を打っている仕草まで全て見通せる。隠そうとすることを隠せていないことすらも分かって、でもそうするしかないソレがとても愛おしい。僕の友人にはそんな人が多い。 僕はバカの中でのずる賢いやつにしかなれなくて、ただのずる賢いやつにもなれなければ、ましてはずる賢い中での策士になんて到底なれっこないのだ。そうだ。僕は美人界のブスではなく、ブス界の美人を選んだのだ。そんなことも分かった上でずる賢いやつになっている僕は、とてもずる賢い。
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