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#8
LINEを漁って手当たり次第に連絡をする。アメ村の小さいライブハウス、ワンドリンク1600円のチケット。ノルマは三十枚で、一人あたり十人呼ぶ約束だった。
聞いたこともない名前の僕達の出番は、頭もトリも任せられる訳はなく、中だるみしやすい3番目だった。機材が乱雑に置かれている袖で狭い中チューニングを済ませると僕達の出番が来た。ステージの照明のせいで逆光がきつい。跳ね返った光は黒い壁に吸われてロクに観客の顔も分からない。それでも客はしっかり入っているのが分かった。
まただ、ドラムのテンポが走っている。袖で必死にチューニングをする僕を見て、ドラムスティックで突いてきた。さも緊張していないかのように振舞っていた。隙間は空いているものの、少ないとは言えない数の黒い物体が小さい箱の中で蠢きあっているのを見た瞬間に上がってしまったのだろう。ベースがテンポを後ろに引っ張るのが分かる。それを聞きもしないで自分勝手に叩いているせいで二人のテンポが合わない。そんなことに気を取られ、演奏も歌も集中できずにいた。
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