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#1
僕は人前で明るく振る舞う。好感度は高い方だと思っている。それが僕にとっては不都合だ。でも僕の半径三メートルが一番うまく回る方法だった。
明日の事なんて考えずに午前五時に本を読んでいた。普段は一日中スマホを触っている僕にとっては珍しい。狭い部屋で布団を敷いて寝転びながら本を読んでいた。足に棚が当たるたびに気になって姿勢を変える。その棚が凹んでいることに気が付いた時には遅かった。紙が破けて骨組みが折れている襖、ベッドと一体型の勉強机の焦げ跡、そして凹んだ棚。嫌でも目に付いた。数年前に反抗的な態度を取った僕がつけた足跡だ。
棚の凹んだ部分を直そうと両側から押してみるが、こちらに膨らんだ。戻そうと思って押すと凹んだ。凹んでは膨らみ凹んでは膨らみ、当時の反発しているままだった。
自分では大人になったと勘違いしていたが、反発してくる当時の僕に対して反発しそうになった。
家に一人で居る時は雨が降っていることが多い。雨は好きな方だ。嫌な事を合理化させてくれる気がするから。億劫な用事や面倒な事も「雨が降ってるから」で済まされる。済まされる気がするだけだ。そろそろ痩せないと、って思っているだけの奴の黒烏龍茶と同じ。
よくよく考えると、楽しみにしてた事すらも雨は盗んで晴れになる。でも僕は雨が好きだ。みんなが何気なく送っている日常が、僕は嫌いらしい。
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