僕はあの日君を

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 僕は君と手をつないで散歩したり、その時感じたことを伝えたり、季節の移り変わりを一緒に感じていたかった。  春は桜を見て「綺麗だね」って。  夏は陽の光を浴びて「眩しいね」って。  秋は色づく木々を見て「秋だねぇ」って。  冬は北風を二人でよけて「わぁ、寒いね」って。  美味しいものを食べた時は「美味しいね」って。  悲しい時は「大丈夫だよ」って。  朝が来るのが怖い時は「一緒にいよう」って。  そんな時間がずっと続けばいい。続いて欲しい。続きますように。僕はそんな「君との普通」を望んだ。  でも、僕の世界はそれを許してくれなかった。君とのことが知られて僕は嫌というほど殴られた。商売道具の顔以外。そして君と別れろと言われた。これ以上舐めた真似を続けたら次はあの女だと言われた。  あの日僕は君を捨てた。僕自身も捨てた。君を捨てた僕が僕を生きる事なんて出来ない。僕は今日も悲しい灯りの充満するこの街で捨てた君を思いながら君の知らない女を抱く。
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