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「ひゃー。なんだかすごいものを見ちゃったね。」
サチに見つかる前にそそくさと退散した私達は、予定通り駅前のカフェに向かった。
「親友だと思っていたのにサチがあんな風に告白されてるの初めて見た…。」
ああ…と頭を抱える私に、ミカは意外そうにしていた。
「本当?サチわりと告白されてるよ?女子高だから相手も女子だけど、あの対応を毎回してるんじゃそりゃ王子と呼ばれるよね。」
サチは同級生からよく王子という愛称で呼ばれている。それはミカが面白がって呼んでいたあだ名が周りに定着したものかと思っていたのだが、どうも真相は違っていたらしい。サチは背も高ければサバサバした性格だし、それでいて優しい。女子のあこがれを具現化したような人だ。それはモテるはずである。
「えーなんで私それ知らなかったんだろう。なんだかショック…。」
一番近くで彼女を見ていると思っていた。それなのになぜわからなかったんだろう。
「もしかして、だけど。あえてアイには隠していたんじゃない?」
「どうして?なんでも相談しあえる仲だと思っていたけど、サチは違ったのかな?」
「好きな人がいるって言ってたじゃん。それがなにか関係しているのかもよ?」
その言葉にドキリとした。彼女の好きな人の話なんて今まで一度たりとも聞いたことがなかった。中学くらいの時に私がサチにちょっと片思いの相談をしたくらいで、そのあとは
お互いに色恋沙汰の話題は出てこなかった。そんな彼女に好きな人がいたなんて。
「好きな人がいるなんて、聞いたことなくて。私ってそんなに相談するには頼りないのかな…。」
はあ、とため息を漏らすとパンケーキを頬張っていたミカは少し呆れた顔をした。
「そういうことじゃないんだけどな。」
「え、なに?」
「いや、なんでもないよ。ほら早く食べないとあんたの分も食べちゃうぞー。」
ミカが私の分のパンケーキに目を付けたので、私は取られまいと目の前のパンケーキを頬張った。甘い甘いアイスクリームがパンケーキの上でどろりと溶けていく。その様がなんだか私の今の気持ちのように見えた。
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