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翌日、サチはいつものように挨拶をくれた。
「おはようアイ。昨日は本当ごめんね。」
まさか見ていましたとも言えないし、私は少しギクシャクした面持ちで挨拶を返す。
「おはようサチ。ううん。大丈夫。今度また行こうね。」
なんだかいつもと様子が違うことを察したのかサチは小首をかしげた。
「…アイ、なにかあった?」
「え、何かって?」
「いや、なんかいつもとちょっと違うなって気がして。」
彼女はいつだって私の些細な変化に気付いてくれる。
まったく、そういうところがずるいんだぞと言ってやりたい。
「おっはようアイ、王子。」
ミカが後ろから突然抱き着いてきた。
「おはようミカ。なんだやけにご機嫌だな。」
「ふふーん。王子がアイのデートをキャンセルしたから昨日は私が可愛いアイちゃんとデートをしたのです。おいしかったねーパンケーキ。」
ミカがにこりと笑いかける。
「お店も可愛かったし、いいお店だったね。」
私がミカにそう返すとサチはなんだか面白くなさそうな顔をしていた。
「一人にしちゃって悪かったなって思ったけど、楽しそうでよかったよ。」
彼女は張り付けたような笑みを浮かべてそう言ったが、それは明らかによかったなんて思っていない風だった。
サチはクラスメイトに呼ばれ、そのまま去っていった。
「ねえミカ、サチなんだか怒ってなかった?どうしたんだろう三人で行きたかったのかな?」
私が不安そうにミカに問うとミカはそんな私を盛大に笑い飛ばした。
「え、なんで笑うの?」
「あーなるほどね。サチは大変だな。」
どういうことかわからずに困惑していると始業を告げるチャイムが鳴った。
数学の答えなんかよりサチの不機嫌の答えが知りたい。
そんな風に考える私にその日の授業は一切入ってこなかった。
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