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いつものお子様オムライスがテーブルに運ばれてきたとき、時夫は口を開く。
「お母さんのいう通り、僕はずっと正君と一緒だ」
「うん!」
正もやっと事態を飲み込めたらしく、笑顔でそう答える。
「1つお願いがあるんだ」
「何?」
「また僕の似顔絵、描いてよ」
「うん!父ちゃん!」
正がそう快諾したそのとき、カルボナーラとナポリタンが運ばれてきた。
「じゃあいただきます!」
3人は声を揃えてそう言うと、目の前のごちそうを食べ始める。
「でもな、誠さんから釘を刺されたよ。枕草子の72段だってさ」
苦笑いをしながらそう時夫は美優紀に告げる。
「それは、どういうこと?」
「ありがたきもの。舅に褒めらるる婿。枕草子の72段にはそう書いてあるんだ。舅に褒められる婿なんてめったにいないってね。つまりさ、結婚は認めるけどお前のことを簡単には認めないぞっていうメッセージなんだよ。これ。しかも結婚は『婿入りが条件』だともほのめかしてるんだ」
時夫がそう言うと、
「不器用なお父さんらしいわ」
美優紀はそう言って笑った。
3人の新たな門出を祝うかのように、レストランの窓の外には雲ひとつない空が広がっていた。
【終わり】
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