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一面に広がる空はどこまでも青く、そこには綿菓子のような雲が2つ3つ、ふわりふわりと浮かんでいる。土手には草が生い茂り、その緑の中にシロツメクサの花やセイヨウタンポポの綿毛などの白がちらほらと見受けられる。日曜の午後の陽気に誘われたのか、レジャーシートを敷いた家族連れも沢山訪れている。
土手を降りたところに広がる河川敷。正はそこで時夫とキャッチボールをしていた。日曜のキャッチボールは正にとって2年くらい前からの習慣のようなもの。今日も40球ほどの投げ合いが終わり、時夫が正に声をかける。
「なぁ、正君。ちょっと話さないか?」
「いいよ。とーちゃん」
正はそう返事すると、時夫のもとへと駆け寄ってきた。時夫が土手に座ると、小学1年生の正も隣に座った。
「僕な、もうすぐとーちゃんじゃなくなるんだ……」
「うん……」
少しだけ顔が曇った正に、時夫は穏やかな笑顔を見せる。
「でも僕は、これからもずっと、とーちゃんだからな。それは2年前も今も、そしてこれからも変わらない」
「うん。とーちゃん」
正がそう力強く言うと、時夫は人目も憚らず正のことをがっしりと抱きしめた。
とーちゃんが、とーちゃんじゃなくなる……
時夫の体の温もりを感じながらも、正の胸にはこの言葉がズシリと響いた。
半年と少し前のことを思い出したからだ。
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