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「チスイさん。用件はなんだ?」
『以前も申しましたが、鳥辺トモの連絡先を教えて頂きたいのです』
「前にも云ったが、どこの誰とも知らないあなたに教えるわけにはいかないのですよ」
『もう名乗りました』
「いや、そういうことじゃなくて。鳥辺さんはご存じなんですか、あなたのこと」
『知らないでしょうね』
壁に苛立ちが募る。
なんとも人を喰った、慇懃無礼を絵に描いたような対応ではないか。
「だいたいあんた、この番号もどうやって調べたんだ?」
少しきつい口調で壁は尋ねた。電話の向こうからは暫く妙な連続音が聞こえていた。ややあって、その音がチスイが喉で笑っている音だと気付く。
「なにがおかしい?」
『だって壁さん。あなた、御自分が理解なさっているより随分と御高名ですよ。あなたの連絡先くらいは少し探ればすぐに出てきます』
電話の向こうはなおも笑っている。
壁は電話を切ろうと、受話器を耳から離したその刹那、
『今空き室で煙草吸ってます。廃材が多いので、火はきちんと消さなくてはなりませんね』
壁は事務所を飛び出した。
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