一、構太刀

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 リョウは市街地に紛れるまでに一台でも対向車とすれ違った時点で車を乗り捨てるつもりでいたが、幸い道程の周囲には民家が少なく、生活道とも離れていたためその心配はなかった。あとはウルメタミコの縊死死体を隠しておける適当な場所を見つけるのみ。  死体なんてどうするんだという壁の再三の問いかけをいいだけ無視して、リョウは暫時眠りに落ちた。放浪生活が長いせいか、短時間でも深い眠りを得られる体質になっている。  壁は苛立ちと恐怖の綯い交ぜになった複雑な心持ちで、右側に寝る男をちらと盗み見た。左腕上部の無数の目玉はほとんど閉じている。と思いきや、肘近くの比較的小さいひとつがぱちりと瞼を開け、壁を見た。壁は思わず目を逸らし、やや置いてまた左腕を見た。比較的小さいひとつが瞼を閉じるが、今度は別のひとつが目を開けた。  まるで目玉ひとつひとつに意思があるようだ。  化け物めと壁が改めて認識したように呟いた。  鉄拳が飛んできた。 「ね、寝てたんじゃないのかよ」 「今ので起きた。蒸し暑いな」  欠伸をしながらリョウは答えた。本当に熟睡していたらしい。  駅前に1LDKの貸事務所があったのでリョウは壁に借りさせた。ついでに古着屋で上着も購わせる。 「酷い出費だよ」  元がとれるもんでもないと古着屋の前で壁がぼやくのを、リョウが耳聡く聞き取って、 「じゃあここで解散するか?」     
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