一、構太刀

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 人が。散々酷い目に遭わされてきたじゃないか。 「それは今は考えない」  容姿だけで居場所がないんだぞ? 「人の世界は見た目が大事なんだ」  俺は人じゃないのか? 「それも今は考えない」  刹那の内省を中途で打ち切り、彼は立ち止まった。  ここは一階の隅の部屋。  一階につき十ほどの部屋があり、地下には入院患者用の風呂やら洗濯室があった。無論患者には目に入らない位置に霊安室へと繋がる通路もあった。  人が生き死にを繰り返した場所だ、空気は濃密で少し肺臓が軋む。  一度大きく息を吸い込むと肋間がバキバキと鳴った。  ぱらぱらと天上から埃が落ちた。 「二階」  ※     
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