二、火車

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「なに云ってやがる。火車はお前を呑み込むつもりだったんだぞ?」 「それならそれで、私はそのほうが良かったんだ!」  タミコの感情の爆発で火車は炎の勢いを増し、がらがらと車輪を鳴らし、再びタミコに突進する。  リョウはタミコを地に捩じ伏せた。 「そうまで云うなら斬ってやるよ」  これ以上タミコの殺意の暴走を放っておいてはいけない。絶対にいけない。 「え……」 「俺がお前を殺してやるって、そう云ってんだ」 「リョウ」  ぎりりと、リョウの奥歯が軋むのをタミコは聞いた。 「その刀で私を斬るの?」 「この刀は妖怪の刀。いずれ人の世の物ではないなら、」  轟。  火車は改めて、新たな殺意を発するリョウに狙いを定めた。 「妖怪の女ひとり、斬るのは容易い!」  轟轟。  呑まれる! 誰もがそう思った瞬間、リョウは火車の曵き手を左手でしっかりと掴んでいた。地獄の炎がリョウの手を焼くが、リョウの身は焼却されるその一方で再生を繰り返し燃え尽きることはなかった。  凄まじい熱と痛みに苛まれながらリョウは、 「おいタミ! こいつはどこからやってきたァ!」  と地に平伏す女に大声で問うた。  タミコは思わず地を指差す。  リョウは雄叫び、左手一本で火車を持ち上げると、思い切り、  地へ 「帰れえッ!」     
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