雨乞い

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 女子衆とは反対にある弐の曲輪では、侍達が喜びの空気に包まれていた。 「いやあ良いものを見た」 「百姓どもの雨乞いとはまったくもってちがう」 「霊験あらたかなる踊りですな」 「眼福眼福」 「これで民草も喜ぶでしょう」  この出来事を呆然と見ていた瀬鳴弾正と五家老であったが、[瀬鳴の懐刀]または[瀬鳴の鷹]とよばれる三冬家老は、すぐさま勘定奉行所に雨乞いをしたことを領民に伝えるよう指示した。  この時、町奉行所を司る日長家老は遅れたため、城下町にちょっとした騒動がおきてしまう。  雨は三日ほど続き、尾張藩全体に一時ながら潤いが戻ったという。  その事を知った三冬家老は弾正に、藩主に雨乞いの事を伝えてはどうかと進言するが、あまりにあてにされても困るという理由で弾正はそれを却下した。  そしてこの出来事が、一人の武士の人生を変えるのだった。
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