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武士の家禄は、家が続かないと藩主から貰えない。
家は長男が継ぐものだが、長男に万が一があった場合の為、次男三男をもうけている家が多い。
だが、その立場ゆえに、飼い殺しのような生き方を歩まなければならない。
高之進はその生き方を受け入れているので、兄が継がないというのを怒っている。
康之進は、高之進を見て思う。
高之進は出来た弟だ。私に万が一があった時、滞りなく継げるように私と同じ事を学んでいる。
正直、部屋住みで終わらせるのは勿体無い。だから他所に養子に行かせたいし、実際にその話があった。
だがこの真面目一徹は、秋家の為に私が子をもうけ、その子が跡を継ぐまでは居るという。いつになるというのだ、歳をとったあとでは、養子どころではないではないか。
「文福、お前の真面目なところは、それこそ秋家の一族の為になる。私はやりたい事がある。お前が継ぎたいといえば、父上達を説得しやすいのだが……」
康之進が言い終わらないうちに、高之進は拒否の言葉を告げ、部屋を出ていった。
「まったく、皆が皆、決まり事に凝り固まっておる。しかたないな、からめ手でいくしかないか」
康之進は呟くと、書き物の用意をし始めた。
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