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部屋に戻ると、すでに用意してあった荷物を持ち、急いで屋敷を出ようとしたが、目の前に立ち塞がった者がいた。
「兄上、私は騙されませんよ。一体どうやって秋水様から書状を手に入れたのです」
「騙すも何も、私の熱い想いに心を打たれてだな……」
「嘘を申しますな。言わないとせっかくの謀、台無しにしますよ」
この真面目一徹が。と思ったが、高之進の言葉に、ん? と首を傾げる。
「文福、ひょっとして私を許してくれるのか」
康之進が恐る恐る訊くと、高之進はため息をついて答えた。
「もう秋水様を巻き込んでいるのでしょう。これで、あれは嘘でした何て言ってごらんなさい、秋家の評判はがた落ちです。兄上の謀にのるしかないのです」
「さすが文福、わかっておるな。その調子で秋家のことを頼んだぞ」
さりげなく脇から通り抜けようとするが、高之進が押し留める。
「通して欲しければ、この件のからくりを教えて下さいな。でなければ後々辻褄合わせに困りますから」
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