空梅雨

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 みなづきの言葉をよそに、さくら姫がぼおっと外を眺めていると何かが横切った。 それを何気無く目で追うと、ふとひらめく。 「みなづき、よい考えが浮かんだぞ」 と言って、にやと微笑んだ。みなづきは ため息をつく、まったく今度は何をやらかすのかと。  それから十日ほど経ったある日の夜である。みなづきは母のきさらぎに呼ばれた。 「近頃の姫様は如何です? 随分と大人しいようですが」 「暑い日が続いているので、疲れているのでしょう、私にも大人しくしているように見えます」  みなづきの言葉にきさらぎはとりあえず安堵したが一抹の不安がよぎった。なぜならさくら姫が静かにしていた後は何かしらの騒動が起きるからである。  だが、守り役の みなづきが何も感じてないのなら、本当に暑さでまいっているのだろう。それはそれで心配なのだが、騒動よりはましだと思いなおした。 「女子衆は大丈夫ですか」 「暑い日ばかりでまいりそうでしたが、暑気払いの工夫を思いつきましたので、それをやっています」 「工夫とな、 なにをしているのです」 「雨乞いの踊りを覚えさせています」
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