雨乞い

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「……であるからして、この水不足において……」  弾正は話しながらも、どうにもならぬなと内心思っていた。  雨が降らぬため困っているのは、百姓だけではない。商人も職人も男も女も老人だろうと大人だろうと子供であろうと人である以上、皆、水が必要なのだ。  目の前のこ奴等とて同じだ。白邸領主などと威張っていても、自分とて同じである。  だがしかし、雨が降らねばどうしようもない。今やれることは、民草の不満が大きくならないように、為政者側である武士たちに我慢を強いることしかできないのだ。 「……とにかく頼んだぞ」 弾正の話が終わると、力なく皆、はいと応えた。 席を立ちかけた弾正が、思い出したように 「皆、このあと酒宴に入るが、さくらが皆のために何か催してくれるそうだ。楽しんでやってくれ」 と言い残し、退出していった。 さくら姫様が何をなさるのだろうと、皆思いながらも酒宴に移り、酒肴を口にした。 日も落ち、少し涼しくなったのもあり、皆の酒がすすみはじめる。
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