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「・・・そんなこと、分かってる。こちらが動いて、わざと隙を作る。そしたら、あっちが動くでしょ。そうでも対しないと、対処のしようがない。そうでしょう!?」
ジュリアは苛つきを表すように机を叩いた。この苛つきは自分の不甲斐なさに苛ついているらしく悔しそうに顔をゆがめる。
「もうあまり時間がない。あっちもそれは一緒なはず、だから、こちらから動くの。黒玄、お願い、力を貸して・・・?」
ジュリアは、黒玄を真っすぐに見つめた。彼女は珍しく黒玄に対して素直に言ってのけたのであった。そのジュリアの言葉に黒玄は、にやりと笑みを浮かべた。その表情はまるで悪人のような悪い笑みであったが、瞳には優しさが見えた。
「お願い?命令じゃねぇのかよ?」
「だって、命令って嫌いでしょ?」
彼女はふふっと軽い笑みを零すと、なんでも分かっているような口ぶりであった。それに対し、黒玄は苦笑を浮かべながら、「よく分かってらっしゃる。」と、ボソリと呟いた。
「じゃあ、行きますか。」
黒玄は珈琲を一気に飲み干すと、気合を入れたのか、そう言って立ち上がった。
そして、狛も黒玄に続いて立ち上がった。
先に立ち上がった黒玄を見ながら、狛は、「黒は、命令されても何だかんだ手伝うんだろうな。」と小さく心の中で呟き、口元に笑みを浮かべた。
「では、ジュリア、参りましょうか」
玄関へとスタスタと軽い足取りで向かい、スッとドアを開けた。
彼女はふぅ、と息を吐き出し、今から行われることに対し、覚悟を決めたと狛へ伝えたものの、不安が心を刺した。
そして、胸騒ぎが止まらず、更に不安は募っていく。
しかし、彼女を支えてくれる守護者たちを見ると、すっとその不安が一つ一つなくなっていく、気がした・・・。彼女は、誰よりも先に扉を開け、一歩を踏み出した。
外は青空が広がり、雲一つない青空だった。
これが彼女たちの少しの平和が終わり、長い平和を勝ち取るための戦いが始まった。
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