「鈴の守護者は逃がす」

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「まぁ、まずは三つに分かれよう。鈴には紅と蒼。刀にはアタシと・・・黒玄。玉には狛と翠。んじゃあ、そういうことで、また後でね。・・・っと、あと敵を発見次第、報告ね?」  ジュリアはそう言うと、先程と同じように空中に陣を描いた。そして、またしても光が辺りを包み込んだ。光が消えた後には彼女の姿が消えていた。それを見た黒玄は少し焦ったように声を上げた。 「ちょっ、おい! ・・・ったく、んじゃ、俺も行くわ。」  黒玄はそう言うと、黒玄の背中に綺麗な光沢のある、漆黒の翼が見えた・・・気がした。 そして、彼も一瞬にして姿を消した。 「・・・では、そろそろ行きましょうか、翠。」  狛は無事に目的地へ彼らが向かえる様に願いながら、消えた場所のしばらく見つめては翠の方へニッコリと笑いかけた。 「はい。ジュリアから怒られたくはないですしね?」  翠はそんな彼の表情を見つめながらも、フフッと軽く楽しそうに笑った。  そして、二人の姿も消えた。 「ん~。僕らも行こっかー。」  揃った声と一緒にそこには誰もいなくなった。 ――鈴(リン)の森  鈴の森は、比較的平和的な地域である。なぜなら、様々な種族が住処にしているものの、ほとんどの種族が平和的であり、力の関係的には他の地域より弱い種族ばかりである為、比較的平和なのである。  そして、ここは双子がとても好きな場所でもあった。 とても落ち着きのない2人ただけれども、ここに来れば、最近バタバタと忙しかった日常を忘れ、ゆっくりと昼寝が出来るからである。 更にここに祀ってある水鈴は彼らにとってとても相性の良いものである為、それに守られているこの場所は居心地の良いものとなっているのである。 そんな馴染み深い場所へ彼らは何日かぶりに足を踏みいれた。 「真っ暗~。」  二人の揃った声と二人の足音が静かな森に響く。 彼らにとって庭のようなここは動きやすく、自分たちのも目標である「水鈴」の祀られている祠の位置は把握していた。それが何かは分からなかったが、触れてはいけないものであると、本能的に感じ取っていたらしくかった。でも、その祠の近くは透き通った空気が漂っており、いつも二人で昼寝をするのは、その祠のある付近であった。  その祠を目指し、森を進んでいた。すると、急に紅がピタリと足を止めた。それにつられて蒼も歩みを止めた。 二人の歩みが止まると足音以外は聞こえることなく、その辺りの音はやはりなかった・・・。
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