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一瞬の遅れが彼らの勝ちへと近づいた。二人が繰り出した風は並大抵の強さではなく、大木の根ごと吹き飛ばした。
そして、小さな身体の彼女もろとも吹き飛ばされ、紅は強く大木に体を打ち付けた。
彼女が意識を手放す瞬間に聞いた音・・・声、それは蒼の怒り籠もった悲痛な声であった。
―――
物音が聞こえた瞬間、二つの影が素早く動いたのが分かった。
そして、二つの影を追い、光の差すほうに出ると、紅の体が宙に浮き、ゆっくりとスローモーションで飛んでいくのを見た。反射でもう一人の自分の名を呼んだ。
「紅ッッッ!!!」
蒼は自分でも驚くほどの声と腹の底から怒りが沸騰するのを感じた。
紅の元に駆け寄り、なるべく平らなところに少しでも彼女自身が痛みを感じない様に移動させ、そっと横たえた。
どうも気絶しているようで動かなかったが、蒼は紅の耳元で何かを囁いた。
すると、紅に微かに意識があったようであった。ゆっくりと紅の手が蒼の手を掴んだ。
そして、首を縦に振り、頷いたように見えた。
蒼はそれを見ては、ゆっくりと立ち上がり、強く琥珀と華を睨み付けた。
強い強い怒りを露わにする蒼に二人はビクッと肩を震わせ、恐怖を感じた。
しかし、彼らは強く彼を睨み付けたが華の表情は悔しさが滲み出ていた。
蒼はその表情に気付くものの、更に睨みをきかせた。それと同時に蒼か何かボソボソと呟く、それは彼らにとって予想もしていないものであった。
琥珀は身の危険を感じ、素早く行動に移った。
一刻も早くここから逃げなくては、と思うものの一番に気にかけるのは片割れである華であった。彼は彼女に声を掛けようとしたが、掛けることが出来なかった。
華は魂が抜けたかのように彼を見つめていた。
予想をはるかに上回るものであり、自分の今の実力では起こせないものを蒼が今から行おうとしている、その事実が彼女の力を奪ったのであった。
琥珀が華に手を伸ばそうとしたその瞬間、森の中にあるはずのない水が彼らに襲い掛かった。
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