「鈴の守護者は逃がす」

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「華!」  琥珀は咄嗟に波に飲み込まれる前に手を伸ばし、華をありったけの声で呼んだものの華はそれに応じず、ただ呆然と波を・・・波の先の蒼を見つめていた。琥珀は彼女を守ろうと術者である蒼とその後ろで小さな息をする紅へ自分の相棒であるナイフを鋭く投げた。 「させるか。」  蒼はそれに冷静に判断し、自身の髪を同じ青のボディーである時雨を懐から取り出し、ナイフに向かって放った。すると、一瞬でナイフは氷漬けとなった。  彼は悔しげに舌打ちをすると、邪魔だ、という様に手を大きく横へ振った。すると、彼らへ迫っていた津波が一瞬足を止めたのである。蒼は少し感心したようにへぇ、と小さく声を零した。  しかし、波を一瞬食い止めただけに過ぎずに彼らは波に飲み込まれていった・・・。  彼女は波にのまれる瞬間、感じた。 彼らにかなわない理由が、そして自分たちにはそれがどうしても埋めることが出来ない、ということを・・・。  彼女たちには家族と呼べる存在がお互いにいないのである。 そして、今彼女たちに攻撃をする彼らにも自分たちと同じ境遇であることも知っていた。同じである彼らに敵対していたのは守護者を外された、その理由だけではなかった。  彼女は彼らが羨ましかったのである。家族がいなく、寂しい思いをしてきたはずなのである、自分たちと同じように・・・。  自分たちはふたりで必死に支え合って生きてきた。なのに、彼らは楽しそうに笑い、助けて欲しい時には周りに助けを求め、助けてもらえる。それは彼らが明るく、誰にでも好かれるそんな性格だから、自分たちは好かれる人間ではないから、と決めつけていた。  あの時もそうだった、と思いつつ、小さく自嘲が零れた。
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