「夢と少しの幸せ」

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 彼女はベッドで眠っていた。 体を深くベッドに沈ませ、息をしていないのではないかと疑うくらい、静かに眠りについていた。 彼女の頬には水の流れた道が一つ。  流れる涙は、少しウェーブのかかった金髪。 目を開くとどんな宝石のような綺麗な瞳が覗くだろうか。 睫毛は適度に長く、唇は薄くもなく、分厚くもなく、綺麗なピンク色。四肢のバランスもよく、指先までもが綺麗である。  彼女の名前は、ジュリア=グローリー。 小さい頃の彼女は人形の如く、綺麗で可愛らしかった。 様々な人、周りの者に愛され、可愛がられた。そして、彼女自身もそんな周りの人々が大好きであった。  そんな彼女の住むところは、“魔界”と呼ばれるところである。 魔界のイメージはなんだろうか?暗い?悪?冷たい?悪いイメージしかないだろう、と思う。彼女の住む魔界はそんなイメージは連想しない、空は常に青空、虹がかかっている時もある。動物・・・魔物の中には、強靱なものもいれば綺麗なものもいる。彼女はそんな世界に住んでいた。  彼女が周りから愛される存在となる前、彼女はあまりにも大きな力を持ちすぎた。生まれたばかりの赤ん坊にも関わらず、修行をし、やっと手に入れる力、攻撃としての魔力が備わっていた。  彼女が生まれたときに即位していた魔王は男性であった。 当時の魔王は彼女を危険視していた。自分の地位が早くも危ぶまれている、彼はそう感じたようだった。 彼はあることを実行へと移した。それは、彼女の力を奪う、もしくは存在自体を消す、単純に言うと暗殺、ということであった。 しかし、魔王が企てた暗殺は、彼女の力によってあまりにも簡単に消されてしまった。  そして、その数か月後、魔王である彼は何者かに殺されてしまった。それは彼女に対して暗殺を企てたせいなのか、未だに彼を殺した者は分かっていない。  彼女は元魔王が殺された一週間後、魔王となった。それが彼女の役職となった。その名の通り、魔の王・・・魔族の王。魔王の称号を受け継ぐ者は、生まれながら魔力が強い者、特別な魔力を持つ者が授かる称号である。それを、生まれて間もない彼女が手にしたことは魔界でも異例なことであった。  しかし、誰も、彼女が魔王になることに異を唱えなかった。いや、唱えることが出来なかった、そう言った方が正しいのかもしれない。それほどまでにも彼女の力は強く、偉大であった。
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