「夢と少しの幸せ」

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 そして今、眠りについている彼女は夢を見ていた。 それは彼女が無知であった頃、平和で守られていたころの夢であった。  そこはジュリア一人だと、広すぎるぐらいの城で寂しく、楽しい場所ではなかった。 魔王の城ということで、とてつもなく広く、仕えるメイドや城を守る騎士など様々な者が近くにいるものの、彼女の傍に居てくれる者がいなかった。異例の魔王ということで恐れをなし、近付く者は恐怖の表情に染まった世話係ぐらいで、いなかった。  そして、友人と呼べるものなどいなかった。ましてや彼女と同年代の者などいるはずもなく、前魔王に両親を殺されてしまった彼女は、孤独であった。  だが、幼い彼女は、そんな境遇にも特に気にすることなく、綺麗な庭で花を愛でたり、時折飛んでくるイグナーと呼ばれる小鳥のような生物と戯れたりと、彼女は彼女なりに、静かに城で過ごしていた。  そんな日常が変わったのは、ある青年たちが彼女のもとへ訪れた日の事。その日も特に変わったことをしていたわけではなく、いつもと変わらず綺麗な自慢の庭へ出て、小さな花を見つけては小さく微笑み、そこに可愛らしいイグナーが下りて来ては、彼女に擦り寄ってき手は笑みを深めていた。  そんな彼女の後ろへ何人かが近づいた。彼女はそのことにすぐには気付かず、自分が庭の花を見る為にしゃがんでいたところへ、影が差したのですぐさま、後ろを振り返った。 「お初にお目にかかります、陛下。私は、狛(ハク)と申します。守護者として、ジュリア様を御守りする為に参りました。」  銀髪の髪を持った青年が、小さなジュリアに跪いて、目線を合わせるとニッコリと中性的な笑みを浮かべた。ジュリアは少し驚いたように銀髪の髪を持つ、狛と名乗る青年を凝視した。  彼女は「陛下」と呼ばれることに慣れていないらしく、自分が呼ばれたことに気付いていないようであった。 すると、隣に深い緑の髪を持った女性もジュリアに跪き、軽く頭を下げた。 「ジュリア陛下、私は、翠(スイ)と申します。狛と同じく貴女を御守りする為に参りました。・・・可愛らしいイグナーと遊んでいらっしゃいますね。」  彼女もニコリと優しく笑い掛け、貴女に話しかけていますよ、というように、戸惑うジュリアに対して自己紹介を続け、イグナーを見遣り、優しく微笑みかけた。
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