「夢と少しの幸せ」

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 笑い転げる手前の黒玄は、少し諦めたようにここに来たのであった。なんせ、これから自分が一生涯守り抜くことになった人物は、異例中の異例の魔王である。それも小さな子供で、自分が苦手としているものであった。                            更に、苦手とするものがあと一つ。自分の前を歩く、この絶世の美女にも負けないほどの美しさを持ち、銀髪の髪を持つ青年、狛である。 この狛という青年は年齢の割に考え方が古臭い・・・頑固な性格である。それと同時に主には絶対、という見事に守護者に適した性格の持ち主で自分とは正反対なのである。  元々、自分が守護者に任命された時から諦めたような感情があり、乗り気ではなかった。しかし、目の前のこれから主人になるだろうこの子供は、俺が任命されている意味を知っていないのだろうか?と疑問が浮かぶが、この子供に自分を嫌悪しているという感情が感じられないことに、何故か嬉しいと感じてしまった。 それに小さく首を振り、・・・この子供は、自分を退屈させないだろうと感じた、それが理由で俺はこれの傍に居てもいいと、思うことに決めた。  ジュリアは大笑いする黒を見てはどうして、笑っているのか分からず、戸惑った様に黒を見つめる。すると、だんだんとこちらまで可笑しくなり、つられて笑い声を上げた。 黒の青年は一頻り笑い終わると、彼女を見つめ、生意気そうな笑みを口元に浮かべると跪いた。 「はじめまして、俺は黒玄だ。これからジュリアの友達兼守護者だ。」  彼は笑みを浮かべながら言うと、荒っぽい手つきで頭をくしゃりと撫でた。 そんな様子を見て、狛や翠は呆れたように笑いを零したが、主が笑っているのを確認すると優しい笑みへと変わり、すくりと立ち上がった。  ジュリアは嬉しそうにころころと鈴の音のような笑い声を零した後、少し考えるような素振りを見せると、「あ。」と声を漏らした。 「友だちは、同じ歳ぐらいじゃないとダメなの。・・・だから、黒玄と狛と翠はジュリのお兄ちゃんとお姉ちゃんね!」  ジュリアは、一人すっきりしたように言った後、満面の笑みを浮かべた。  彼女に対して、彼らのおかげか、周りの者は態度を少しずつ変わった。彼女はもう一人ではなくなり、彼女の笑顔は花が咲いたようだった。 それを最後に、優しく、暖かく幸せな夢は、黒い渦に消え去った。
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