「夢と少しの幸せ」

7/11

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
 守護者とは、魔王を守る者、字の通りである。守護者は魔王が即位した年に種族の中で力が強い当主、四名選ばれる。選出方法は魔王の城の一角にある、『選晶の間』という部屋があり、その中心には水晶がある。その水晶に魔王自身が触れると、『四つの色を持つ羽根』が舞い降りてくる。その色で、守護者を選出するのである。 ―――  その日は、いつも世話をしてくれている女性から、今日は、『せんしょうのぎ』がありますので、綺麗にしましょうね、と言われた。 それの意味が分からず、首を傾げつつじっと見つめていると、彼女は、少し引き攣った様な笑みを浮かべていた。 その見慣れたそれに、少し悲しいと感じつつも表に出さず、何も言わず、大人しく『せんしょうのぎ』の用意を進めた。  それからしばらくして、用意をしてくれた彼女が「魔王様、選晶の間へ参りましょう。」と声を掛けに来た。それに小さく頷いた後に、綺麗なドレスを着て向かう自分を鏡に映した。いつもは違うそれに違和感を覚えたが、彼女の案内に従って、『せんしょうのま』へ向かった。  そこは、少し広めの部屋だった。 部屋全体的に暗く、不気味が悪いそれにあまりいい気はしなかった。 だけれど、部屋の中心にある小さな光を見つけては、それに魅せられたのか、目が離せなくなった。吸い寄せられるように光るそれへと近づいて行く。 「ジュリア様、こちらでお待ちください。」  私を連れて来てくれた彼女からそう声を掛けられ、近くで見たいという欲求のままに動きたいが、何か言われるのが分かっていた為、大人しくその場に止まった。 静止するよう告げた彼女は、入ってきた扉から出て行った。それと代わって入ってきたのは、黒いローブを着た人物だった。 「・・・では、魔王様。こちらまでお進み下さいませ。」  ローブの人物は、入って早々、中央の光まで行き、こちらへと促した。それに素直に従うと、「手をこちらへ翳していただけますでしょうか。次に選晶へ魔力をお願い致します。」という言葉に従って、選晶という名の光に手を翳した。  すると、吸い取られるように魔力が流れ込んでいくのを感じた。それと同時に光が五つの方向へ飛んだ。すると、それは羽根へと姿を変えたようだった。その中のひとつから目を離すことが出来なかった。それは、真っ黒な、闇の様な、すべてを吸い込んでしまいそうな黒の羽根だった。 
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加